大腸の話

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 日本滞在中に、健康管理のつもりで初めて大腸の内視鏡検査を受けたところ、小さな潰瘍が見つかった。念のためにと行った生検(バイオプシー)でこれが癌と判定されると、私は突然がん患者になった。
 同時に検査を受けた夫は、ポリープが3個。こちらは、検査の際に切り取って終わった。夫のものをきのこ型とすれば、私のそれはかび型とでもいうのか、表面に広がるタイプ。15年ほど前に母が開腹手術で切除した大腸がんはやはり大腸壁面に広がっていたから、がんの形も遺伝したようだ。
 一方、がんの治療方法は日進月歩。今回の私のようにリンパ節に転移している可能性が極めて低い早期大腸がんには、開腹手術ではなく、内視鏡的治療を用いるという。
 内視鏡的治療は、正式には大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection、略してESD)と呼ばれる。
 大腸の厚みは約5ミリメートル。内側から順に粘膜・粘膜下層・筋層・漿(しょう)膜下層・漿膜の5層からなると、今回初めて知った。
 大腸がんの中でも、粘膜と粘膜下層だけにとどまるとみられるものを早期の大腸がんといい、剥ぎ取るようにがんを切除する内視鏡的治療ESDの対象となるのだそうだ。
 この剥離術は、外科手術にくらべ腹部に傷がつかず、大腸の機能が保て、入院日数も比較的短期間等の利点がある。しかし、やや複雑な操作を必要とするため、時には出血や切除部分の大腸に穴のあく等のリスクもあるという。
 リスクを納得した上で剥離術を受けた。入院は1週間。手術日と翌日午前中は、点滴のみ。その後、水分摂取が許され、食事は徐々に重湯から三分粥、五分粥、全粥、通常のご飯へと変化して退院の日を迎えた。幸い術後の回復は順調で、シアトルへも予定通りに戻ることが出来そうだ。
 大腸がんの5年後生存率は95%だが、進行し他臓器に転移すると5年後生存率は15%と激減する。切り取った病変部の病理検査がまだ終わってはないものの、今は、早期発見・早期治療のひとまず無事に終わったことを喜びたい。
 皆さんの大切な方にも、がんの早期発見・早期治療のチャンスがありますように。【楠瀬明子】

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