今年の奨学金受賞者。前列左4番目からマデリン・タワさん、ジョシュア・リーさんの叔母、リカ・コヤブさんの父親、エミリー・グランさん、和歌山県人会夫人会長マリオン・コータニさん、サラ・ジョンソンさんの叔父、有田会長
 南加和歌山県人会(有地敏弘会長)は5日、ブエナパークのジョージ・ベリス公園で夏恒例のピクニックを開催した。家族会員や友人、来賓ら280人以上が集まる中、奨学金の授与式や余興などが行われ、同県につながりのある仲間と故郷に想いを馳せつつ親睦を深めた。
 奨学金制度を設ける同県人会は今年も5人の学生を選出。この夏高校を卒業し、進学するための奨学金を授与されたのは、エミリー・グランさん、サラ・ジョンソンさん、リカ・コヤブさん、ジョシュア・リーさん、マデリン・タワさん。エミリーさんとマデリンさんは和歌山県への短期留学制度にも選ばれ、来年の夏2週間の滞在を予定している。
料理が並ぶテーブルで手伝うボランティア
 日系4世であるマデリンさんの父方の曽祖父は、捕鯨で知られる県東の太地町出身。以前、いとこがこのプログラムを経験したことがきっかけで応募したという。マデリンさんは来夏の訪日を楽しみにしており、「日本語をもっと勉強して、短期留学を有意義に過ごしたい」と語った。日本滞在中の目的は「自分のルーツをしっかりとこの目で確認し、親戚とも交流を深めたい」とした。
 会長の有地さんによると、和歌山県は海外移住者や子女らとの交流にとても熱心で協力的だという。県特産品の海外展開にも力を入れており、近年では普通の3倍の大きさの柿を北米に売り出している。「紀州の梅干し」以外の県産ブランドとなるか、県側は大いに期待しているという。 
 バーベキューの良い匂いがし始めたころには、ランチテーブルに長蛇の列ができていた。ピクニック統括の坂地ジャックさんは「食事が足りるかどうか、いつも心配」とし、たくさんの参加者があることに感謝しつつも、担当者としての気遣いも見せた。
中路千鶴さんと記念撮影する4人の子供とその家族
 会場の一角で集合写真を撮る団体がいた。車椅子で中央に座していたのは、中路千鶴さん。5人の子どもは中路さんの亡くなった夫の名字ボイアを名乗る。この日は不在だった長女のエリザベス・アキさんを筆頭に、長男ショーン・ケンイチさん、次男ポール・ヒロシさん、次女シュバーン・ミツエさん、そして三男のブルース・サブローさん、その家族、姪のナンシー・ウォングさんとその娘など、総勢21人がそろった。
 大正8年、ターミナルアイランド生まれの中路さんは12月で99歳。マンザナーの日系人強制収容所で暮らした経験を持つ。両親は同県那智勝浦出身。中路さんは今も日本語で会話をし、聞き取りにも問題がない。
互いに再会を祝う中路千鶴さん(右)と佐藤ヒサエさん
 ニューヨーク州の私学、シラキュース大学在籍時に南米ガイアナ出身の夫と出会い、のちに結婚した。ショーン・ケンイチさんは「母は勉強もピアノも歌も、何でも教えてくれた」と懐かしむ。ナンシーさんも「兄弟で教会のコーラスに所属し、ボーイソプラノを響かせていたわね」と思い出を語った。
 会場には中路さんの同級生、佐藤ヒサエさんの姿もあった。2人はターミナルアイランドの幼稚園で席を並べ、93年たった今もピクニックで顔を合わす間柄。家族も2人の元気な様子を毎年驚きをもって見ているという。
 中路さんたち以外にも和歌山県人会には今年100歳の長寿が3人在籍している。9月3日に100回目の誕生日を迎える浅井菊次さんもその1人。浅井さんはピクニック参加を取りやめたが、来月8日に行われる日系パイオニアに感謝するイベントで「199歳からの遺言」に登壇する予定。「ご高齢の方同士の対談。どんな話が聞けるか、とても楽しみ」有地さんは語った。
輪に狙いを定めてフリスビー盤を思い切り投げる女の子
 子どもたちを対象にしたゲーム、寿の会による日本舞踊、書道パフォーマンスなどの余興を楽しんだ後、300人近くが参加したピクニックは閉会した。【麻生美重】
自動製造機から吹き出すシャボン玉を見つめる幼児

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