同時代人

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 日本最高齢の福岡の女性、田中カ子(かね)さんは現在115歳。1903年(明治36年)1月2日生まれ。「ライト兄弟が初飛行の年に生まれた」とのこと。「ライト兄弟」といえば誰もが知る歴史上の人物。その同時代人がまだご健在ということになる。
 「人類の飛行の歴史は意外と短い」この事実をあらためて思い返した。
 その流れから、女優マリリン・モンローと元野球選手のジョー・ディマジオの新婚旅行の写真を思い出す。今はなき「パンアメリカン航空」のボーイング377で2人が東京国際空港へ降り立ったのは54年2月1日。滞在は3週間ほどだったという。この訪日フィーバーをご記憶の読者も少なからずいるだろう。
 先月5日が命日だったマリリンの墓地は、ウエストウッド・メモリアルパークにある。高いビルの間の路地を抜けた先。南側に面した、花一輪飾るのがやっとなほどの質素な納骨堂。一世を風靡(ふうび)したハリウッドのシンボルが眠るにはずいぶんと殺風景な外観だ。
 20年前、雑誌の「マリリン特集」の取材に同行し、彼女と仕事をした写真家やボディダブル(俳優の代役)、プロデューサーらを訪ねた。本名のノーマ・ジーンと名乗っていた駈け出しのころを知る者や「モンローウォーク」で人気に火がついた後の彼女を語る者、また、シーツ一枚に身を包んだマリリンのポートレートを撮ったことで自身のキャリアを飛躍させた者など、関係はさまざま。だが、思い出を語る彼らのようすは、みな一様に幸せそうだった。
 「マリリン・モンローと同じ時代を生きた」彼らとの時間は、わたしを50年代へタイムトリップさせた。
 フリーウエー405にほど近いブレントウッドの閑静な住宅の寝室で、62年8月5日、マリリンは遺体で発見された。このニュースを鮮明に思い出せる人はまだ身近に大勢いる。「精神を病み、薬物で自死した」との当局の発表、その後に巻き起こった陰謀説などが記憶にある人も。
 マリリンが存命ならば今年92歳。明治から平成を生きた田中さんには、ぜひとも次の元号まで元気でいてもらいたい。【麻生美重】

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