愛着は人がつくるもの

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 リュックサックの肩掛けがほつれてしまった。この9カ月、仕事でもプライベートでも毎日私の背中にぴったりとくっついていてくれた。
 修理に出さなきゃと思いつつ、時間も値段もどのくらいかかるかわからない。代わりのリュックもない。重いものを入れすぎたんだ、と自分を責めた。
 しかしその心配事は、ある日一気に吹き飛ぶことになる。「心配しながら使っていただくのは私たちが望むことではありません」—フィンランドのテキスタイルブランド「マリメッコ」の女性店員はそう言ってすぐに新しい商品と交換してくれた。
 フィンランドに到着してすぐのことだった。夏休みの滞在中に修理してもらえないかダメもとで相談してみた時のこと。「こちらのミスです。こんな壊れ方は見たことがありません。今後同じことが起きないようにする材料になります」と。まったく予想していなかった展開に驚き、喜び、マリメッコがもっと好きになってしまった。私もこんな会社に貢献させてもらいたい、働きたい、そんな風に思ったほどだった。
 彼女の神対応が会社のポリシーゆえなのか、独自のとっさの判断なのかは分からない。世界中にある店舗でも同じ対応をしているのかも知る由もない。ひねくれた見方をするならば、私はブランド戦略に引っかかってしまったのかもしれない。しかし、働いている一人ひとりはもっと純粋にこのブランドを愛し、顧客の幸せを思って接客しているのではないだろうかと思った。
 何かを好きになったり愛着をもったりするのは、対応する「人」によるところも大きいのではないだろうか。レストランでもカフェでも居酒屋でも、そこにいる「人」が素敵だなと思って通うことも多い気がする。例えばスターバックスコーヒー自体は好みではないけれど、店員さんの明るい笑顔や丁寧な対応が心地よくてつい足が向いてしまうことがある。
 今日も新しくしてもらったリュックを背負って職場に行った。リュックの中には同じブランドの大好きな柄のポーチ。さらにアウトレットで見つけた花柄のブラウスも着て行った。店員さんへの感謝の気持ちは、ブランドへの愛着につながり、愛用品となった。それが私の幸せにも確実につながっている。【中西奈緒】

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