フィナーレの「農兵節」を全員で演奏する「松豊会」メンバーと日本舞踊の坂東秀十美、坂東拡三也の各社中
 日本民謡の普及・伝承に努める「松豊会(佐藤松豊会主、加州全域の会員50人)」は18日、ガーデナのケン・ナカオカ・コミュニティーセンターで温習会を開催し、約300人の観客と関係者を前に日頃の練習の成果を披露した。
 日本から三味線の笹本流家元・笹本壽師を招き、日舞の坂東秀十美社中、坂東拡三也社中と共演。新名取のお披露目と同会の53周年を盛大に祝った。
 晴れて名取となったのは佐藤松豊葵、佐藤松豊毬、佐藤松豊庵、佐藤松豊吉、佐藤松豊成の5人。第2部の冒頭、5人は順に唄や弾唄を発表し、師匠や応援に訪れた家族、友人らに研さんを積んだ姿を披露した。
 佐藤松豊美月師範によると、通常の舞台では三味線と唄は別の人が担当する。弾きながら唄うというのは相当な技術を要するため、美月師範は「間違えてもご愛嬌」とほほ笑む。
「麦屋節」を演奏する会員と、踊りを披露する新名取の佐藤松豊庵
 端唄「潮来出島(いたこでじま)」に合わせた坂東秀十美師と川上愛美の踊り、日本からのスペシャルゲスト笹本壽の演奏や歌唱、坂東拡三也師による日本舞踊「黒田節」などが花を添え、1年に1度の大ざらいを盛り上げた。
 民謡を習い始めたばかりというバレービレッジ在住の戸田千秋さんは、客席から先輩たちの歌声に聴き入った。「民謡は息の出し方や発声の仕方が独特で難しい」戸田さんは普通の歌と民謡は違うと感じる。「しろうとは10秒間ほどしか続かない息が、プロは40秒間続く。音域も高い」。声が低めという戸田さんは「少しでも高くなるようにがんばって練習中」と語った。
 新名取、松豊吉の応援に来たというパロスバーデス在住の石井陽子さんは「今年もすばらしいパフォーマンスだった。ゲストの笹本さんの演奏も堪能した。来年も楽しみにしている」とエールを送った。
 温習会を終えた新名取は、今後の意気込みを語った。
 松豊葵「初めて進行、司会に関わった。これからも皆に楽しんでもらえるよう尽力したい」
 松豊毬「仲間やお客さまからの言葉に感謝して『名取』にふさわしくなるよう精進したい」
 松豊庵「松豊先生の名前をいただいた者として、真に精進していきたい」
 松豊成「数少ない男性歌手としても民謡の良さを伝えていきたい」
 松豊吉「(民謡を)細く長く続けていこうと思う。忍耐強い師匠に感謝している」
軽妙なトークで会場を沸かせ、「民謡玉手箱」を披露する佐藤松豊師匠、奥は太鼓を担当する娘の佐藤真リサ
 会の終盤、松豊師はソロ演奏の前に「あんまり長いとお尻が痛くなると苦情が来るからそろそろ終わりに」と軽快なトークで会場を笑いに包んだ。「(お弟子さんが温習会を)全部準備してくれたので、わたしは家でテレビを見ていられた」ユーモアを交えつつ、門下の子弟に感謝の気持ちを伝えた。
 会を終えた松豊師は「内輪だけでなく、一般の方に(おさらい会を)見てもらうことで励みになる。今年も大勢の方に来てもらえて良かったと思う」額にうっすらと汗を浮かべ、安堵の表情を浮かべた。 【麻生美重】
温習会を終え、全員で記念撮影する佐藤松豊師匠(前列左から6番目)とゲストのスペシャルゲスト笹本壽(同列右隣)

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