シアトルの雨と雪と

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 雪国の人には笑われるに違いない。しかし、雪に慣れてない者には、いつ終わるとしれない雪に囲まれた日々は辛かった。
 今月3日午後に予報もなく突然雪が降り始め、あれよあれよと思う間に積もったのが始まりだった。それから第2波、3波と雪は降り、気づけば延々と雪景色の日々。
 だいたい、シアトルの冬は雨と相場が決まっている。40年近く前、ロサンゼルスからシアトルに転居する時、知人が餞別に折り畳み傘をくれた。「あちらは雨が多いらしいですから」と言って。ところが、来てみると傘を使うことはめったになかった。
 雨が多いといっても、シアトルの年間降雨量は東京とほぼ同じ。ただ、夏はめったに雨の降らないかわりに、それ以外の季節は毎日のように雨が降る。けれど小ぬか雨のような優しい雨だから、フードをかぶって傘無しで散歩をし、魚釣りする人もいるといった風だった。
 北緯47度超というのは樺太と同じだが、雪や氷でなく、冬も雨で済んでいるのは海流の関係で暖かいからだという。この冬は降水量は例年並みだったのだが寒気団が居座ってしまって雪となり、今回の大騒動をもたらしたらしい。以前はひと冬に一度か二度降っていた雪も近年は無かったので、全く油断してしまっていた。
 シアトルのあるピュージェット湾岸は、氷河で削られて出来たフィヨルド地形だけに湖が多く丘も多い。シアトルの町の中心部は特に坂道が多く、郊外もまた人口が増えるにつれ丘のふもとから上の方まで住宅地として開発されている。どこに行くにも多少なりとも坂道を運転することになるから、日ごろ慣れていない雪がいったん降り始めると事故が続出する。
 30センチを超える雪に仕方なく家にこもって暮らしたが、雪解けの待ち遠しかったこと。天気予報で気温の上昇を知れば喜び、雪解け水のしたたる音が聞こえるとワクワクした。
 結局、スーパーボウルの試合開始直前に降り始めた一連の雪は、バレンタインデーまでもずっと路面を覆ってはらはらさせ、アカデミー賞発表の頃も裏庭にはまだ白く残っていた。
 シアトルの冬は、やっぱり雨がいい。【楠瀬明子】

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