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大谷翔平選手の原点

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 富山市の公立中学校の教師、坂本穣治さん(59)がテレビカメラの前で嬉し涙を流していた。米プロバスケットボール(NBA)ウィザーズにドラフト1巡目で指名された八村塁選手(24)から突然、国際電話がかかってきたからだ。
 「NBAを目指せ、と先生に言われたこと、それが実現しました」
 八村選手は母親が日本人、父親がアフリカ人。地方都市で「毛色の変わった少年」をバスケットを通じて守り、育てくれたのは坂本先生だと思う。
 今や飛び鳥を落とす勢いのエンジェルスの大谷翔平選手(21)もマリナーズで頑張っている菊池雄星選手(28)も恩師を忘れてはいない。岩手県の花巻東高校時代の佐々木洋監督(44)は二人にこう言っていた。
 「マウンドはグランドで一番高い。そこに立つピッチャーは目立つ。常に謙虚になれ。謙虚になれる一番の近道はトイレの掃除をすることだ」
 ロサンゼルス・タイムズのデラン・ヘルナンデス記者がこの話を記事にしている(6月8日付)。ある会合でこの記事の話が出た。
 「選手を育てる前に人間を育てる。いいけど、個人主義の強いアメリカではちょっと無理だね」(高校でバスケットボール・コーチをしている白人男性)
 「日本のトイレはどこに行っても奇麗すぎる。花を飾っているトイレもあった。日本人のトイレ観はすごい」(最近訪日した中国系ビジネスマンの男性)
 日本人の「トイレ観」は小学校からの掃除教育と無関係でなさそうだ。筆者が小学生だった頃は、放課後に当番制で教室の掃除をさせられた。佐々木監督のコーチ術はこの「掃除教育」の延長線上にあるのだと思う。
 2年ほど前にシンガーソングライターの植村花菜さん(現在Ka-Naと改名)がこんな歌を流行らせた。小さい頃、「おばあちゃんが言っていたこと」を詩(うた)にした。
 「トイレには奇麗な女神さまいるんやで。トイレを奇麗に掃除すると、別嬪さんになれるんやで」
 アメリカでは「掃除教育」なんて無理かもしれない。だが、各家庭でならトイレの掃除は母親に任せるのではなく、子供たちも入れてみんなで当番制にすることだってできる。「トイレ掃除は下人の仕事」という固定観念はなくせるはずだ。【高濱 賛】

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