今年8月の初めに行われた全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝した。同大会初出場初優勝で、20歳178日での優勝は大会史上最年少記録を大幅に更新した。日本人選手では1977年全米女子プロ選手権の樋口久子以来二人目のメジャー優勝である。
 渋野は昨年2度目のプロテストに挑戦して合格したルーキー、今年5月の国内メジャー「ワールドレディスサロンパスカップ」と7月の「資生堂レディス」で優勝している。全英では試合中にもかかわらず、平気で移動中に笑顔を振りまき観客とハイタッチを繰り返す。メディアにも人気となり「シンデレラ・スマイル」と注目を集めた。その強気の姿勢とクイックプレーはゴルフ関係者に好感を持たれ、アメリカの視聴率も高率をマークしたという。久々の女子ルーキーの活躍は全英女子オープンという絶好の舞台で花開いた。
 20歳のルーキーといえば、1998年の全米女子オープンで優勝した韓国のセ・リ・パク選手を思い出す。私は当時の羅府新報のコラムに「20歳の国民英雄」のタイトルで彼女を取り上げた。彼女は物怖じすることなく堂々と記者の質問に答え「私は私のスタイルを保つ。決してタイガーウッズのスタイルではない」と言い切った。自分は自分という自負がある。コーチがやり過ぎを心配するくらい練習に、英語の勉強に励んだ自信が言わせる言葉であろう。一流の選手になるには直接のコミュニケーションが出来る英語が不可欠と自覚している。
 当時の韓国は通貨危機で国内経済が危機に直面していた。そんな中でのパク選手の優勝と堂々とした発言はどれだけ韓国国民に勇気と誇りを与えたことか。まさに「20歳の国民英雄」であった。
 自分流は渋野も同様。どんな状況でも自分を失わずに戦う。スマイルからいざボールに向かった時の女豹のような凄みのある目付きは別の魅力だ。全英でのインタビューは通訳付きだった。やがて英語にも真剣に取り組み、独自のユニークな受け答えはメディアの注目を惹きつけるだろう。今後もぜひ順調にその類い稀な才能を伸ばし、ゴルフファンを魅了して欲しい。【若尾龍彦】

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