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ノーサイド

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 平原綾香さんのしびれるほどの重厚な君が代斉唱の歌声で、日本でのラグビーワールドカップがはじまりました。メンバーの約半分が外国生まれで構成された日本代表は、たとえ国籍がどこであろうと日の丸の重責を背負って、君が代を歌っていました。私たちもアメリカにいれば、胸に手を当てて厳粛な気持ちでアメリカの国歌を歌っています。私たちが国籍の違いで誰からも非難されることがないように、日本に住む外国籍の方も国籍や宗教や正当な主張が虐げられてはならないのです。
 ラグビーが他のスポーツと大きく違うのは、その観戦スタイルです。どちらかに分かれて観戦するのではなく、同じ場所で敵味方が混在して応援するのがラグビーのスタイルです。そして試合が終われば敵も味方もなく「ノーサイド」。お互いがその健闘を讃え合います。紳士のスポーツと言われるゆえんです。もうひとつ有名なのは、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」という言葉です。一人が皆のために、皆が一人のためにという考え方は、日本ではスポーツだけでなく社会でも広く使われるフレーズとなりました。
 ラグビーの強豪国は、オリンピックでメダルを多く取る国では決してなく、トンガ、サモア、フィジー、ジョージアなど他のスポーツであまり脚光を浴びない国であることも、応援したくなる理由かもしれません。サッカーのワールドカップでは数十億円の賞金がありますが、ラグビーワールドカップには賞金はありません。アメフトと違ってヘルメットや肩ガードなどをつけずに生身の体が直接ぶつかりあう危険なスポーツです。それでもラグビーに魅了されるのは、商業的ではないスポーツの根本的な魅力を教えてくれるからなのかもしれません。
 本来ならばどこの国籍かという事よりも、現在どこに住んでいて、どう生きたいのかという事の方が大切にされるべきことではないでしょうか。現実を認めようが認めまいが、私たちの未来の姿であることを予見しています。私たちが多様性を尊重し、寛容さを受け入れる社会に生きるべきだということを、ラグビーは教えてくれます。【朝倉巨瑞】

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