本格的な憲法論議を

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 74年前の敗戦で日本は体制がガラリと変わり、新憲法が制定された。新憲法には占領軍GHQの意向で財閥解体・農地解放・教育改革などさまざまな改正が盛り込まれた。なかでも大きな改革は不戦・非武装の平和条項である。今まで何度も憲法改正の動きはあったが、戦争の悲惨さが身に沁みた国民の平和への希いは強く、この間憲法改正の議論さえ難しかった。国際社会の激しい変化の中、74年間も憲法改正が行われないのは日本くらいである。
 ロサンゼルス国際空港の近くに10万人に満たない小さなホーソーン市がある。私はある日、市長の車に乗せてもらい「あなたの市長としての一番大切な仕事はなんですか?」と聞いてみた。「市民に職と安全を確保することだよ」と彼は即答した。国にとっても国民の安全(国防・治安)と経済発展は特に大切な課題である。日本国憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあり、第9条で国際紛争の解決手段としての武力行使とそのための一切の戦力を放棄した。
 しかし、世界の国々は平和を愛し公正と信義を守るとは限らない。その後も各地で戦争や紛争は起き、国際情勢は休むことなく急激な変化を遂げている。最近ではトランプ大統領の自国ファーストに触発され、ほとんどの国々が自国の利益確保に躍起となっている。治安維持には一定の警察力が必要だし、国防には一定の武力を備えざるを得ない。現に日本の軍事費は2017年度で450億米ドルを超え世界で第8位である。日本は憲法は改正ではなく解釈の拡大で乗り切ってきた。他国への攻撃は駄目だが、国民を守る自衛の武装は許されるという解釈である。
 国の運営は国防・福祉・教育・経済と、限られた予算の効率的な適正配分が不可欠である。政府は毎年赤字予算を組み、累積赤字は国際的にも注意勧告を受けるほどに膨らんでいる。与野党同士の揚げ足を取るような国会論議ではなく、今こそ本格的な日本の在り方を議論すべきではないだろうか。それが次代の子や孫に残すべき財産であり、義務でもある。【若尾龍彦】

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