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乳がん啓発セミナー開催:医師やカウンセラーが講演

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不安障害と乳がんの関係を解説するカウンセラーの荒川氏

 日米両国の日本人女性に向けて乳がんについての情報発信をするNPO「BCネットワーク」が9月22日、トーレンスのリダック・ゲートウェイホテルで「乳がん早期発見啓発セミナー」を開催した。およそ70人が集まる中、医師や心理カウンセラー、栄養士が最新の乳がん治療や心の病の対処法、食生活への取り組みなどについて講演。早期に発見すれば乳がんは治る病気であることを説明し、乳がんとの向き合い方について解説した。【吉田純子、写真も】

最新の乳がん治療法


最新の乳がん治療法について講演した猪狩医師

 順天堂医院乳腺腫瘍科の医師で現在はロサンゼルスにあるシーダス・サイナイ・メディカル・センターに研修中の猪狩史江医師が最新の乳がん治療法について講演した。
 近年、乳がん患者は増加傾向にあり、がんになる確率を示す罹患率は、ほかのがんと比べて高い。1980年と2011年の日本における年齢別の乳がん罹患率の推移をみると、乳がんの患者数は40代後半から50代にかけて著しく増えており、猪狩医師は「環境の変化のほか、診断技術が向上したため早期に見つかる患者が増えたことで、数自体も上がっているのかもしれない」と話す。
 一方で、ほかのがんと比べると乳がんの生存率は高く、ステージが早いと予後も良好だという。「初期の乳がんは治る病気。がんになることと、がんで命を落とすことは別」と強調し、早くに病気を見つけ、適切な治療を行えば乳がんは完治できると説明した。
 自覚症状のない乳がんを見つけるには検診がもっとも効果的で、早期に発見できれば簡単な薬物治療や手術で済み、治療期間の短縮にもつながる。「アメリカに住んでいると病院へのハードルが高いかもしれないが、月に1度はセルフチェックを行い、定期的に検診に行ってほしい」と話す。
 乳がんの治療法は、手術、放射線、薬物療法の3つ。「以前は取れば取るほど良いと考えられていたが、現在は整容性を求める時代になってきている」と話す猪狩医師。乳房温存手術が普及し、全摘出手術との割合は半々くらいだという。
 また診断技術の向上により、マンモグラフィーで微小な石灰化も確認することができ、石灰化の形や分布によって良性と悪性かを診断していく。
 しかし、早期がんであっても分布の範囲が広いと部分切除の手術では取り残してしまう確率が高くなるという。「早期がんでも広がりが小さければ部分切除、広範囲であれば全摘手術が必要になることも覚えておいてほしい」と猪狩医師は話す。
 乳房温存手術の場合は残っている胸に局所再発の可能性がでてくるため術後に放射線照射が行われ、乳房照射により局所再発は3分の1に減るという。
 一方、全摘手術は病変が広範囲にある場合や、放射線治療が行えない場合などに適応される。
 全摘手術後の乳房再建は乳房インプラントを入れる方法と自身の組織から行う自家組織再建があるが、現在問題になっているのが、この乳房インプラントだ。食品医薬品局(FDA)は今年7月、アイルランドの製薬大手アラガン社が販売する乳房インプラントを入れた患者の中から発症率は0・03%と少ないがリンパ腫を発生した患者がでたとして自主回収(リコール)を要請。同社は回収を始めた。
 日本には同社の乳房インプラントしか輸入されておらず、保険適用になっていたが、今回の回収を受け、現在日本では乳房インプラントを入れられない状況になっている。従って、日本で乳房再建を希望する患者は現在、自家組織再建しかできないという。
 自家組織再建にはおなか、または背中の組織を使って再建する方法の2種類があり、猪狩医師によると、自家組織再建をした場合は仕上がりがとてもきれいで触った時の質感も良く、自分の体温を感じられるという。一方、体に別の傷ができてしまうデメリットもある。
 治療方法に関しては、日本のガイドラインは米国のガイドラインをもとに日本人に適用するように作られているため日米で大きな違いはないという。しかし「米国の方が保険適用になっている新しい抗がん剤や臨床試験の件数も多く、そういった面では米国の方が進んでいるという印象がある」と猪狩医師は話す。
 一方、米国は治療費が高額なうえ、言語の壁もあり、治療のために日本に帰国する日本人患者も多い。
 米国で生活する日本人女性の中でも乳がんと闘う患者は多い。「2007年の論文によると、日本人の乳がんの罹患は閉経後をピークに下がるが、欧米人は閉経後もピークのままのカーブを描く。しかし米国に移住した日本人は欧米人と同じカーブを描いていた。この結果により、環境因子が関わっているのではないかといわれている」と猪狩医師は話す。
 「乳がんの発症に確実にリスクといわれているのが閉経後の肥満。脂肪の多いものや喫煙、アルコール摂取を控えることは確実に乳がんの予防に繋がる」と力を込める。
 「がんは2人に1人がかかる時代。1人で抱え込まず、相談し早期に見つけ治療してほしい」と話した。

心の病との対処法
食生活にも工夫を

 セミナーではカリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也氏が乳がん患者がかかりやすい不安障害やうつ病、適応障害への対処法などを説明した。
 不安障害と乳がんには深い関係があると話す荒川氏。再発の心配や、家族への影響などから不安になることがあるという。
 こうした不安の対処法として①深呼吸、②今この瞬間に集中すること、③カフェインを避け野菜中心の食生活を心掛ける、④有酸素運動、などが重要と説いた。
 また抗がん剤治療の副作用などで乳がん患者がうつ病になることもあり、対処法として①家族、友人などと接する、②1週間90分を目安とした有酸素運動、③日光を浴びる、④オリーブオイルや天然鮭などに含まれるオメガ3の摂取、⑤質の良い睡眠、を心掛けることが有効と話した。
 経験者トークでは約20年前に乳がんになったという日本栄養士の武田佐多子氏が病気から考える体と栄養について講演した。
 野菜を使った減塩の食事を心掛けていたにもかかわらず栄養士である自身が乳がんになってしまったことで自らを責めてきたという武田氏。しかし考え方を変え自分を責めることを止めることで前向きに過ごせるようになったと話す。
 栄養士としては、化学療法後など食欲がない時は料理にライムや柚子など柑橘系の食材を料理の香りづけに取り入れるなど工夫すると食べやすくなるとアドバイス。食生活ではタンパク質の摂取と減塩を心掛けて欲しいと呼び掛けた。
 セミナーの最後にはよなみのりこ氏による健康になるためのエクササイズが行われ、自宅で数分でできる運動を伝授した。
 セミナーの前には第1回目となる「乳がん患者歓談会」も行われ、乳がん患者が自身の経験を語り合う機会が設けられた。

「私もキャンサー・サバイバー」
武藤総領事夫人、自身の体験語る


「悲しい時でも『ワハハ』と笑うことが大切」と話した武藤総領事の三佐子夫人

 「実は私もキャンサー・サバイバーです」
 こう口を開いたのは、8月に在ロサンゼルス日本総領事に着任した武藤顕総領事の三佐子夫人。
 12年前に甲状腺がんを患い、その後治療を続けた。告知された日は病院から駅までを泣きながら歩いたのを今でも覚えているという。しかし、当時は小学生と中学生の子を抱え、「何が何でも生き残らなければ」という思いに突き動かされた。
 当初は検診の度に毎回口の中がカラカラに乾いてしまうほど緊張して結果を聞きに行っていたが、健康的な生活を試みるうちに3年目くらいから「私、大丈夫なんじゃないかしら」と思い始めたという。
 がん患者のひとりとして三佐子夫人は「病気はストレスが原因でなるといわれる。しかしストレスをチャレンジとして受け取り、ファイティング・スピリットととらえることが大切だと思う」と力を込める。
 「悲しい時でも『ワハハ』と笑うと脳が勘違いし、体の免疫を高めるホルモンを出してくれると聞きました。それではみなさん、一緒に笑いましょう!」と来場者に呼び掛けると、皆が一斉に「ワハハ」と笑い出し、会場は朗らかなムードに包まれた。

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