悪質なアパート強制退去令

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 サウスパサデナ市のアパートに住む親友宅に先月、アパートのマネージャーから、60日以内の立ち退きを命じる手紙が来た。家賃の滞納をはじめ、これまで一度も問題を起こすことなく、模範的な賃借人だったにも関わらず、理由なしに突然言い渡された「no-fault eviction」に、私も親友も憤慨した。
 加州で2020年から、アパートなどの家賃の年間賃上げ率を5%までにとどめ、理由なしの強制退去を禁じる「法案1482」が施行されることを受け、その施行前に家賃を引き上げようとする悪質な退去勧告が急増している。アパート退去を強いられてホームレスになる危機に直面する人も出ており、ロサンゼルス市やトーランス市では、理由なしの強制退去を禁じる緊急条例を相次ぎ制定し対処している。
 サウスパサデナ市でも先日、同様の緊急条例が制定されたが、親友はすでに新しいアパートを見つけ、引っ越しを済ませた後だった。退去したアパートは、リニューアルして各部屋にランドリーと冷蔵庫が装備される予定で、これまでワンベッドルーム1650ドルだった1カ月あたりの家賃が2300ドルに引き上げられ、ツーベッドでは2800ドルになるという。
 パブリックレコードによると、全32ユニットのこのアパートは今夏オーナーシップが変わり、1100万ドル以上で売却されていた。家賃の大幅引き上げを見込んでの売却価格だろうが、このアパートに20年以上住んできた高齢者や、幼い子供らがいるファミリーにとって、突然の強制退去令の深刻さは計り知れない。ここで築かれた、お隣さんや周辺コミュニティーとの絆も断たれることになる。
 ロサンゼルス市では、市民の約60%が賃貸住宅に住み、その大半は、家賃が収入の30%を上回っている”家賃過重者”との統計がある。ホームレス問題が深刻化しているが、身近で起きるアパート強制退去の現状から、誰もが明日はホームレスになる可能性があることを痛感させられた。
 今年のサンクスギビングは、わが家があることに感謝しなければいけない。【平野真紀】

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