うどん県とジョージ・ナカシマ

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 高松に行く度に、地元の讃岐うどん店に足が向かってしまいます。根っからのうどん好きで、前回来た時には少ない時間で駅前のうどん店に駆け込み、今回は羽田へのフライト時間に余裕があったので、老舗のうどん店で腰のあるツルツルした手打ち麺を堪能し、うどん県でのささやかな楽しみを味わいました。
 このうどん店を出たところに、栗林公園があったので散策しました。入場者はまばらで、案内ボランティアの人も暇を持て余しているようでした。富士山を模して造成された飛来峰(ひらいほう)と名付けられた小高い丘に登ると、美しい栗林公園全体が見渡せました。山を背景とする木々や池が絶妙に配置された中に、美しい曲線の木の橋が架けられています。庭園内には約1400本の松が植えられており、盆栽の林の中にいるような気分にさせられます。ミシュラン・グリーンガイドで、三つ星に輝く庭であることを実感しました。
 庭園内には、日系二世として米国に生まれたジョージ・ナカシマの美しい家具が展示されていました。ナカシマが戦時中に日系人収容所に入っていた時に、日系人の大工職人に出会い木工の技術を学んで、江戸時代から使われてきた民具を、米国人の目から見てさらに洗練されたデザインに仕上げていったことで、世界的な家具デザイナーとして評価されていったのです。代表作のコノイドチェア(円すい曲線の椅子)には足が2本しかありませんが、生き物のように美しく安定しています。こんな所にも私たちの先人の技と信念が伝承されていったのです。うどんから日系人に思いを馳せることになり、思いがけず春の訪れを予感させる心地の良さでした。
 わが家の庭では10年ほど前にいただいた細い苗木が成長し、この時期に毎年みごとな桃の花が咲くようになりました。たとえ世界でどのようなことが起こったとしても、美しい庭も芸術的な木々も、時代を超え年月を経ても美しくあり続けます。不安や危機は一時的に私たちの心を乱しますが、どんな状況があっても花は毎年咲き続けます。そのことを忘れてはなりません。【朝倉巨瑞】

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