バッタ襲来と環境保護

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 東アフリカで大量発生したバッタが飛びに飛び、今年に入りパキスタン、インドへと押し寄せた。
 国連食糧農業機関(FAO)が公表する「Locust Watch」によると、 昨年来ケニア、エチオピア、ソマリアの3国で爆発的に増えた大群の一部は、インド洋を北上。新型コロナウイルス感染被害に息を切らすインド西部に広がった。
 5月下旬には、南米アルゼンチンにも隣国パラグアイからバッタの大群が飛来し、トウモロコシやキャッサバの畑を食い荒らしている。近隣の農業大国へ被害が拡大すれば、世界の食糧事情に与える影響は計り知れないものがある。
 世界的なコロナ禍の中、駆除は思うように進んでいない。対策の中心は殺虫剤の散布とされ、卵から飛行可能な成虫になるまでに死滅させることだ。雨期に入ったインドでは大量のバッタが産卵期を迎えたが、この駆除が順調に進めば、東への侵攻を阻止することにもつながる。
 だがこの場合、殺虫剤の使用による環境や農作物への影響が気になる。インドではバッタ飛来で綿花畑が荒らされている。駆除のためとはいえ土地への薬品の大量使用には、生産者も心を痛めるに違いない。
 生物ジャーナリストのレイチェル・カーソンはその著書「沈黙の春」で、化学薬品がいかに自然を破壊し人体を蝕(むしば)むかを詳細に著している。「一度殺虫剤が使われれば、そのおそろしいかすはいつまでも土壌の中に残る」
 インダス川やその支流地域での対策を誤れば、土壌のみならず水質汚染にもつながりかねない。
 カーソンは「人間のちょっとした間違い」のために「実り豊かな土壌がだいなし」になり「節足動物がこの大地をのっとることになるかもしれない」と説く。拙速な殺虫剤の利用は、彼女が危惧するところの「人間のちょっとした間違い」になりはしないか。
 長く続く「巣ごもり」に飽きた子供たちを連れて、先週末はムアパークへいちご摘みに出掛けた。同じ農場内にトウモロコシ畑もあり、やわらかい若葉が遠くまで広がっていた。あの美しい光景をバッタから守り、同時に土と水を守り通すことは果たして可能だろうか。【麻生美重】

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