被害者の日本人男性が訴え:トーレンスで100人超が抗議

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反ヘイト集会

加害者が逮捕されていない理不尽な対応を訴える日本人被害者(中央)

 トーレンス市で起こったアジア系市民が被害に遭った3件のヘイト事件に対し、人種による偏見や差別に抗議する集会が11日、ヘイトスピークの現場となった同市のウィルソン公園で行われた。被害者4人がスピーチし、そのうちの1人の日本人男性は、集結した100人を超える参加者に向け、加害者が逮捕されていない理不尽な対応を訴えた。

参加者に団結を呼び掛ける弁護士のロハスさん

 抗議集会は、3件の被害の訴訟を受け持つ弁護士のサンディ・ロハスさんと被害者らが呼び掛け、各コミュニティーのリーダーをはじめ、個人やアジア系の人権擁護団体などが支援者となって協力し開かれた。
 各リーダーが代表スピーチを行い、「人種主義は断固として許してはならない」「正義のために闘おう」などと団結を呼び掛けた。日系市民協会(JACL)サウスベイ地区会長のケント・カワイさんは、正義のために支援することを断言し、トーレンス市に対しては「すべての公園と施設で、市民がヘイトと人種主義から守られる措置を取ることが重要である」と叫んだ。
 3件の加害者は、いずれもロングビーチ在住の元ソーシャル・ワーカーのリナ・ヘルナンデスによるものだった。ロハスさんによると、初めは昨年10月、デルアモ・モールのレストルームでケイシーリン・サルミナオさんが殴打され、軽犯罪として起訴された事件(罪状認否は事件からほぼ1年後の10月5日に予定)。2件目は先月10日、同公園で運動中のシェリー・ブルセコさんが体に故意にぶつかられ、人種差別的な発言を浴びせられた。3件目は先月10日、匿名の日本人男性が同公園で人種差別的な発言を受けた。2件目と3件目は立件されていない。
 ロハスさんは、集会を開いた理由について、人種差別が相次いで起こっているとし「マイノリティーに対する言葉の攻撃がこのまま続き、当たり前のような世の中になるのはとても危険である。そうなる前に皆で声を上げなければならないと思った」と力を込めた。

トーレンスで起こった一連のヘイト事件についての対応を説明するのアル・ムラツチ議員

 同市を含むサウスベイ地区選出のアル・ムラツチ加州下院議員は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、全米で不穏な状況が続いてると指摘し「その一つがヘイトであり、トーレンスでも起こっている。トーレンスは、アジア系が全体の約40パーセントを占め、普段は静かで安全なコミュニティーだが、ヘイトは平穏を乱す行為である」と非難。三つのヘイト事件に加え、トーレンスでは先月に日本人経営の日本食調理器具専門店の店頭にも人種差別的な脅迫文が貼られたとし「トーレンスでは短期間でアジア系に対する四つのヘイト事件が起こり、被害者を助けコミュニティーが団結して声を上げるこの集会はとても意義がある」と述べた。
 セリートスに住むアフリカ系のザク・コーリアさんは、婚約者に誘われて参加した。集会について「被害に遭ったアジア系だけでなく、さまざまな人種の人々が集まって、それぞれのメッセージを出していてすばらしい。長年アメリカには平等が存在していないと感じていた。その平等の権利を求めていて、共存の大切さをこの集会であらためて知った」と述べた。同公園で起こったヘイトについて「こんな静かな公園で、アジア系の人々を差別するのは信じられない。人は肌の色で判断してはならない」と語った。

人種主義と闘い続ける
被害者の日本人父子

 日本人の被害男性は北海道出身で在米12年、トーレンスに在住する。ウィルソン公園には息子ら3人で遊びに来ていて被害に遭った。駐車場の木陰に車を止めたところで、女に話し掛けられたため窓を開けると、差別的な発言が繰り返された。「発言を止めなければビデオに記録する」と、忠告したが続けたため撮影した。「子どもが同乗していて恐怖を感じたので、何とか落ち着かせようと思ったが無駄だった」。すぐさま警察に直行して被害届けを出した。翌日、連絡があり、警察は同じ加害者が別件でソーシャルメディアで取り上げられていることを把握しており、余罪があることを知ったという。

スピーチで訴える日本人被害少年。左後方が父親

 ビデオを提出したにもかかわらず、検察が証拠不十分で不起訴にしたことに「非常に憤りを感じるし、その対応によりトーレンスは、そこまでひどい人種差別と脅迫行為をしても捕まらないという前例を作ってしまう」と、警鐘を鳴らす。
 一緒にいた息子を気遣い「子どもに対するあのような人種差別と脅迫行為が、犯罪行為でないと解釈されてしまうのは非常に恐ろしい。子どもたちが学校で、あのビデオをまねして、そのような差別行為を他の子どもにしても『いいえ。これは犯罪じゃない。(あの事件で)誰も捕まらなかったじゃないか』と言う。そんな被害に遭うことが一番の懸念」と話す。
 男性の息子の被害少年(11)は、参加者に向けたスピーチで「僕とお父さん、弟(2)を脅して怖かった。警察と大人は子どもを守ってくれる思っていたのに」と悔しがった。羅府新報のインタビューに少年は、女の発言は突然だったため理解できなかったというが、撮影した動画を後で見たところ「何を言ったかが分かって、とてもびっくりして怖かった」と話した。「この世には、いい人と悪い人がいて、たまたま悪い人に出会ったと思う。ここで立ち止まるのではなくて、経験としていいことに生かしたい。警察署に行ってこういうことが2度と起こらないように頼んだ」と語った。
 男性が明確な差別を受けたのは、今回が初めてだといい「犯罪の被害はごくまれだが、これを経験したことで、今回初めて分かったことがある。警察の対応や検察の判断には非常に多くの不条理が存在している」と非難する。擁護された人権団体に対しては「何十年にもわたってこのような問題に取り組んでいることの重要性を私個人として初めて気がついた」と、しみじみと語った。

ヘイトの被害に遭った日本人親子

 差別行為に対し「問題の認識をしないと、改善にならない」と力説し、「社会が犯罪にどのように対峙(たいじ)していくかが問われていて、今日のように100人以上の参加者が集まって、そして『こういうことは、いけない』ということを意思表示して市政に問いただすことが重要だと思う」と述べた。
 6月10日に同公園で2件起こったヘルナンデスによる、ヘイト行為者の女性を表現するいわゆる「トーレンス・カレン」の事案後、多くのアジア人が反応し人種差別を受けた動画が公開され、この2件を合わせた再生回数は2千万回を超す。その反響に対し「あのビデオがきっかけで、より多くの人々が『この状況はおかしい』『この状況を打破したい』と共有する動きにつながったことが非常によかった」と喜ぶ。「アジア人、有色人種として黙って耐えるのではなく『これは間違いだ」と声を上げる機会になった事件だと思う。これは人種差別がなくなるまで続けていく長い闘いの始まりだ」と、強い決意を示した。
 このたびの事件後の対応について「仲間に助けられて、何とかここまできている。でも、まだ、これから」と気を引き締める。この日は小規模の集会だったものの、第2次大戦中の日系人への不当な扱いを例に挙げ、今後の活動に期待を寄せた。強制収容所に移送された12万人に対し、最高裁まで闘った人はわずか4人だったことを強調。「歴史で見直されたことを考えると、たった数人の被害者で始まったこの運動がこのまま大きなうねりとなってくれればいい」と願った。

思い思いの訴えを記したメッセージボードを掲げ、集合写真に納まる参加者。スローガンの「Justice Delayed Is Justice Denied.」とプリントされた黒の揃いのTシャツを着て拳を突き上げ、人種主義との闘いへの一致団結を誓った

抗議集会では、スピーチ後にリズムに乗ったエクササイズ行い、連帯を強めた

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