アルフレスコの思い出

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 パンデミックで飲食店の営業がいろいろ制限され、今は店内飲食が禁止されている。そのニュースで盛んに、アルフレスコ・ダイニングという言葉を耳にした。状況から意味は「アウトドア」と想像できたが、「アルフレスコ」という言葉は聞き慣れなかった。イタリアからきた外来語で、元はAL FRESCOと2語だが、英語化してALFRESCO と一気につづるのもOKらしい。
 80年代にニューヨークで飲食業界専門誌の編集をしていたが、こんな言葉を使っていたっけ? NYには当時から、夏になると席を拡張して戸外で食事をさせる店が多かった。映画ゴッドファーザーで有名な小イタリーのマルベリー街の店は軒並み歩道にテーブルを出し、旅行者は食事中の人々の中をすり抜けて歩いていた。「なるほど、あれがアルフレスコだったのか」。だが、ネットの受け売りによると、本家イタリアでは「屋外」ではなく、「牢屋で」という意味だとか? そうなるとアルフレスコ・ダイニングは「くさいメシ」ということになってしまう…? それはいけない! NYは案外イタリア系移民が多い。それで、少なくとも当時は、この言葉を聞かなかったのかもしれない。
 四季の移り変わりがはっきりした街。夏の戸外ですてきな食事をした思い出は多い。セントラルパークの中に建つタバーン・オン・ザ・グリーンは老舗のアメリカ料理店だが、色とりどりのぼんぼりが吊るされていた光景が忘れられない。思い出すと、温かく懐かしい香りを嗅ぐような気持ちに包まれる。東京、日比谷公園の松本楼も同じ雰囲気を漂わせる思い出だ。
 日本は雨も多いし蒸し暑いのであまり多くの思い出はないのだが、涼を求めた京都貴船の川床料理では川の上に張り出した座敷で食事をした。避暑地のメッカ軽井沢でも、爽やかな風の中、レンタサイクルなんかで乗り付けて、アウトドアカフェを楽しんだ。よい時代だったな。
 最近は新型コロナウイルスのために、戸外での飲食が提唱されている。「マイナスをプラスに変える」ではないが、そろそろ、思い出に残るアルフレスコ・ダイニングを求めて食事に出掛けてみようかな、と思う。【長井智子】

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