家にいても広がる世界

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 これまで闇に包まれていたけれど、素顔は他の国と変わらない気がした。市民や軍人がとても愛おしく、コロナ禍で荒んだ心がほっこり温まった。「いつか統一したら」という思いが作り手の根底にあるのだと思った。
 北朝鮮や朝鮮半島が出てくるのは大抵ネガティブな話。長年解決されない拉致問題やいまだに差別される在日コリアンたち。つい最近だと、川崎市で罰則付きのヘイトスピーチ禁止条例が全国で初めて施行された。日本、韓国、北朝鮮、3者の外交関係はお先真っ暗だ。
 韓国ドラマ「愛の不時着」を見るためにネットフリックスの会員になった。韓国だけでなく日本やアジア各地でも大ヒットしているこの作品。信頼する朝鮮半島情勢の専門記者たちも記事やSNSで取り上げ、学者たちはヒットの裏側を分析して特集が組まれるほどだ。
 ラブロマンスのイメージが韓流ドラマは強いけれど、これは社会派ドラマ。脱北者たちも制作に関わったという。有名俳優が出演し恋愛やコメディーの要素もあり、北朝鮮という国が日本人を拉致したり、核実験やミサイル発射を強行したりするイメージでなく、人々が普通に暮らしている国であることにハッとさせられる。登場人物の描き方、セリフも愛情に溢れている。
 今年のアカデミー賞で外国映画として初めて作品賞に輝いた「パラサイト」と同じ財閥グループが制作に関わっていることも納得だった。韓国のエンタメ業界が潤沢な資金を投じ、スケールが大きくメッセージ性の高い作品を作れるのは、金大中大統領時代から芸術や文化面に力を入れ、国としてしっかり後押ししているからだと聞いたことがある。国家予算に占める文化事業費の割合は日本の10倍というデータもある。コロナ禍でも文化事業には見向きもしない日本政府とは大きく違うところだ。
 こんな素敵な作品が政治の架け橋にもなってほしいけれど、日本はコロナ対策でもなんでも韓国から素直に学ぶことができないから無理だろうか。せめてファンになった日本人が、日本で暮らす私たちの隣人、朝鮮半島出身者やその子孫のことを思うきっかけになることを願いたい。【中西奈緒】

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