今年のアメリカは、春のコロナ・パンデミックに始まって、職権の範疇(はんちゅう)を超えた警官の暴力で失われた黒人の命や人権を守るために、人種を超えた市民が立ち上がり、全米各地で抗議デモが連日のように繰り返され、それが暴動や放火略奪に発展。その後始末もできないうちに山火事やハリケーン、洪水と天災が追い打ちをかけた。
 パンデミックの方はロックダウンが解除され、少しずつ規制が緩められた途端に感染者、死者ともに増加。グラフは再び大きく伸び始めている。
 そしてあと2週間余りで大統領選挙だが、もちろん真価を問われるのは大統領だけではない。上下両院議員の改選に伴い、民主共和両党は議席確保に熱く醜い選挙戦を繰り広げている。
 庶民には想像もできない巨額の選挙資金がテレビ・コマーシャルに注ぎ込まれているのが画面に見えるが、その内容で気になったのは「私は政治家ではありません」と強調する候補者が多いことである。母親あり家庭の主婦あり、教師あり、コミュニティのリーダーあり、中小企業のオーナーもいる。「政治家」にはろくなのが居ませんよ、どうぞ素人で無垢(むく)な私に1票をと言うことだろうか。政をつかさどる専門家?は信用できないということらしい。
 かつては「清く正しく万民のための政治を」と胸を張って初当選の喜びを嚙み締めた1年生議員も、当選を重ねて甲羅に苔が生えてくれば、法の目をかいくぐるすべも覚え、選挙資金を出してくれる大企業の利益になるなら、会ったこともない世の下積み労働者の生活の心配などしているわけにはいかない。みんな家庭の事情があるわけだ。
 耳に快い公約の数々をすべて鵜呑みにするわけではないが、彼らがどこまで初心を貫いて、「私は政治家です」と胸を張れる専門家に育つか。これは青田買いのギャンブルだと思うことにしている。
 郵便による投票を申請したお陰で早めに投票用紙が送られてきたので、記入の済んだ用紙を封筒に入れ、しっかり封をして、早期投票の初日に投票所に持参して投函、今回も無事帰化市民の義務を果たすことができました。【川口加代子】

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