日系兵士の記念切手発行:偉業をたたえ全米で式典も

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ゴー・フォー・ブローク

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ハワイ・ニノレ出身のシロク“Whitey”ヤマモト上等兵をモデルにした記念切手

 「常に、自分のルーツを誇りに思ってほしい」と話すのは 、市民団体「Stamp Our Story」の創立者兼共同委員長で、日系退役軍人未亡人のタカハシ・フサさん。米国郵政公社(USPS)はこのたび、記念切手「Go For Broke Japanese American Soldiers of World War II 」の正式な発行日を6月3日と発表した。このフォーエバー・スタンプが最初に発行される都市は、2005年にフサさんらが、第2次世界大戦で活躍した日系陸軍兵士の記念切手発行を求めて活動を開始したロサンゼルスに決定している。

 あまたの協力の下、長い年月をかけたこの記念切手は、全米でアジア系米国人に対する暴力やヘイトクライムが増加しているさなか、ようやく発行の運びとなった。今後、全米の都市で順次発行される予定だが、同団体をはじめとして、ジャパニーズ・アメリカン・ベテランズ・アソシエーション(JAVA)、ゴー・フォー・ブローク・ナショナル・エデュケーション・センター(GFBNEC)、ジャパニーズ・アメリカン・シチズンズ・リーグ(JACL)、ナショナル・ジャパニーズ・アメリカン・メモリアル・ファンデーション(NJAMF)、ニセイ・ベテランズ・レガシー、フレンズ・オブ・ミニドカなどの団体が協力・支援を行っている。
 記念切手の発行に先駆け、USPSは現在、全米各地で開催される式典やビデオ制作の準備を進めている。日系陸軍兵士たちの偉業をたたえ発行されるこの切手には、史上初のアジア系米国人兵士が描かれており、これまで発行された中でも、アジア系米国人および太平洋諸島住人(AAPI)をテーマにした数少ない切手の一つであるという。

「Stamp Our Story」創立者のタカハシ・フサさん(左)とアイコ・O・キングさん

 「Stamp Our Story」は、記念切手発行を支持する二世兵士の家族や友人、そして活動を支援する団体によって結成されており、彼らの呼び掛けによって、これまで連邦議会議員(91人)、州知事(3人)、州議会議員(7人)、そして市長や地方議員など、全米の多くの議員から郵便局長官宛てに支持する手紙が送られている。さらに海外からも、日系陸軍兵士たちによってドイツ軍から解放された地域のフランス人や関係者から支持が寄せられたという。
 当初「Nisei World War II Soldiers Stamp Campaign」と呼ばれていたこの活動は、戦時中に日系人収容所に強制収容された経験を持つカリフォルニア州在住の3人の二世によって、2005年に開始された。創立に携わったのは、グラナイト・ベイ在住のタカハシ・フサさん(93歳)、カマリロ在住のアイコ・O・キングさん(93歳)、ガーデナ在住のオオヒラ・チズさん(故人)で、内2人は、日系陸軍兵士の未亡人だった。フサさんの夫、カズオさんは、サンフランシスコ出身で米陸軍情報部(MIS)の退役軍人、そしてチズさんの夫のテッドさんは、ハワイのマカウェリ出身の第100歩兵大隊/442連隊戦闘団の退役軍人だった。フサさんとアイコさんは共に、カリフォルニア州セントラルバレーの農村で育ち、コロラド州アマチの収容所で生涯の友となった。
 一方、チズさんは、小東京の有名な雑貨店「KMアキヤマカンパニー」を経営していたアキヤマ家の出身で、戦時中、彼らはアリゾナ州のポストン収容所に送られていた。
 「Stamp Our Story」の共同委員長で、2006年から支援活動を行っているウエイン・オオサコさんは、「フサさんたちは活動開始当時から、記念切手発行活動を通じて多くの人々や団体がつながり、 戦時中の日系陸軍兵士の偉業に敬意を払い、今でもわれわれに大きな影響を与えていることを誇りに思ってほしいと願っていた」と語っている。オオサコさんの二世の両親も、彼らが子どもの頃に、ワイオミング州のハート・マウンテンとアーカンソー州のジェロームの強制収容所に収容された。また親戚の多くが、第100歩兵大隊/442連隊戦闘団、MIS、婦人陸軍部隊(WAC)に所属していた。「JAVA、GFBNEC、JACL、NJAMF、そして多くの退役軍人の家族も活動を支持する仲間であり、彼らには心から感謝している。
活動の創立者の1人であるアイコさんは、JACLベンチュラ支部の会員で、同支部も活動を強く支持している。そして亡くなったチズさんは、GFBNECの設立メンバーで、ご主人のテッドさんも理事を務めていた」とオオサコさんは説明している。
 記念切手発行の式典は、これまでに、ハワイ、カリフォルニア、オレゴン、アイダホ、テキサス州で、すでに開催計画が進んでおり、ほかの地域での開催の働き掛けも行われている。式典は、コロナ禍を考慮してオンラインと対面の両方で開催される予定。式典開催に興味がある場合は、地元の退役軍人団体に連絡し「Stamp Our Story」について問い合わせるか、ウェブサイト(www.StampOurStory.org)で確認することも可能。USPSによると、10分間のビデオを通じ、オンラインでの記念切手販売と全米式典を行う予定で、このビデオは、「Stamp Our Story」および支援団体も制作に協力しており、彼らの活動背景やエピソードが盛り込まれているという。

「Stamp Our Story」創設者のオオヒラ・チズさん(故人)と共同委員長のウエイン・オオサコさん(2007年撮影)

 もともと、記念切手発行を求めるこの活動は、人種差別や戦時中の日系人に対するヘイトなどにさらされながらも米軍に従軍した二世の男女、そして日系社会をたたえるために立ち上げられたという。事実、第2次世界大戦中に、12万人以上の日系米国人の誇りや権利が剥奪され、彼らは強制的に全米各地の収容所に送られている。しかし、このような状況下にもかかわらず、3万3千人の日系米国人が米国への忠誠心を示し、戦争に協力するために入隊。第100歩兵大隊/442連隊戦闘団は、その規模と任務の長さから、21個の名誉勲章と8個の大統領部隊賞を含む、米国史上最も多くの勲章を受けた部隊となった。特にMISの兵士たちは、バイリンガルとして太平洋戦域で連合軍を勝利に導いた立役者であり、長く続いた戦争を少なくとも2年間短縮し、無数の命を救ったと歴史家たちは分析している。さらに、米国が日本を占領していた時期にも重要な役割を果たし、日本を民主主義国家に再構築することに貢献、結果、日本は米国にとって最も強力な同盟国の一つとなった。
 終戦後、日系退役軍人たちは地域社会のリーダーや起業家となり、中には故スパーク・マツナガ上院議員や故ダニエル・K・イノウエ上院議員のように、全米に名を知られる議員になった者もいる。また、日系コミュニティーの再建にも貢献し、より強くより統一された国家の構築にも尽力した。
 日系人兵士たちの活躍は、今なおわれわれに多くの学びを与え、同時に鼓舞させてくれると話すオオサコさん。「彼らは、戦場でも国内でも、さまざまな障害を乗り越えていく強い『can do 精神』を持っていた。彼らの遺志や愛国心、忍耐強い精神は、今もコミュニティーに受け継がれていると思う。それはわれわれがコロナ禍での多くの困難を乗り越える大きな力になるはずだ」と語っている。
 また、前出のフサさんも、支援者に向けてコメントを寄せており「15年間にわたり、私たちの活動を支援してくれた皆さまに感謝したい。記念切手発行は、多くの団体や個人の方々の支援がなければ実現できなかった。発行後は、ぜひ皆で一緒に祝いたい。どんな時でも、自分のルーツを誇りに思うことを忘れないでほしい。日本から渡ってきた私たちの両親が教えてくれたことが、日系陸軍兵士たちにベストを尽くさせたのだと思う」と述べた。
 なお、USPSはこの記念切手を、第100歩兵大隊/442連隊戦闘団のモットーとなった「ゴー・フォー・ブローク」にちなんで命名しているが、現在「ゴー・フォー・ブローク」は、一般的に戦争に従軍した全ての日系米国人の男女を指す言葉となっている。当時、多くの日系米国人が、第100歩兵大隊/442連隊戦闘団、MIS、第1399工兵大隊、WAC、カデット看護隊、陸軍看護隊に所属していた。
 詳細は、ウェブサイト(www.StampOurStory.org)。また日系人兵士に関する情報は各支援団体の公式サイトで閲覧可能。【訳=砂岡泉】

記念切手発行に協力したマイク・エング前カリフォルニア州議会議員(中央)を訪れる発起人と支援者

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