奈良美智、初の国際的な回顧展:LACMAで7月5日まで開催

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絵画にレコード、彫刻、陶器など

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奈良の膨大な数のレコードコレクションを鑑賞するする来館者

 ロサンゼルス郡美術館(LACMA)は現在、奈良美智の初の国際的な回顧展となる「奈良美智展」を開催している。本展では、1984〜2020年までの奈良の作品を、彼が長年情熱を傾けてきた音楽を通じて紹介。館内には、奈良がこれまで収集した膨大なレコードコレクションをはじめ、過去に発表されたペインティング、ドローイング、彫刻、陶器、そして奈良のスタジオを再現したインスタレーション、さらに未公開のアイデアスケッチなど主要な作品が展示されている。

LACMAの正面に設置された高さ約8メートルのブロンズ彫刻「Miss Forest」

 本展キュレーターの吉竹美香氏よると、9歳でフォークソングを聴き始めて以来、音楽に魅了されてきた奈良にとって、レコードジャケットは音楽を象徴するだけではなかった。さまざまなジャンルの芸術に触れたことと、ジャケットとそれに対応する音楽が、彼の潜在意識の中で融合していったという。ことに戦争と経済復興の中で育った若き日の奈良にとって、それは逃避の手段であり、最終的には自己啓発の貴重な手段だった。現在、奈良のスタジオの壁にはフォーク、ロック、ブルース、ソウル、パンクなど、40年以上にわたり収集した膨大なレコードが飾られており、特に、60〜70年代のフォークやロックの世界から受けたインスピレーションが彼の作品全体に反映されているという。
 「奈良にとって音楽との関係、すなわちレコードのジャケットアートとの関係が、美術史や芸術への道標となっている。その情熱を、来館者は奈良のレコードコレクションコーナーからも伺い知ることができるはずだ。また、本展では100点以上の作品を展示して、奈良の作品に対する概念的なプロセスに光を当てている」と吉竹氏は説明している。
 奈良と言えば、鋭いまなざしとどこか不気味な雰囲気を漂わせる人物のポートレートが有名だろう。彼の作品には、幼少期の記憶や音楽、文学、ドイ

核反対を訴える少女「No Nukes」

ツへの留学、自分のルーツであるアジアへの探求、ヨーロッパや日本の現代美術などから受けたインスピレーションを基に、自分自身の内面との生々しい対話が反映されている。「奈良は、同世代の日本の芸術家の中で最も重要かつ認められている芸術家の1人。この国際的な回顧展を開催できることを大変うれしく思う」と話すのは、LACMAでCEOと「ウォリス・アネンバーグ・ディレクター」を兼任するマイケル・ゴバン氏。同氏によると、奈良は、音楽やレコードジャケットを照らし合わせながら、現世代の精神文化を反映した複雑な思いを作品として表現するユニークな能力を持っているという。今回の展覧会では、主に村上隆に代表されるような日本のネオ・ポップ・ムーブメントという奈良の作品に対する一般的な認識から脱却を図り、また、奈良の初期の固く強烈な作品から、過去10年間、特に東日本大震災以降の落ち着いた瞑想(めいそう)的な作品に見られる批判的な内省観や個性に焦点を当てることを目指しているそうだ。
 同展では、ウィルシャー大通り沿いの街頭に設置された約8メートルの、白色に塗装されたブロンズ彫刻「Miss Forest」(20年)や、「核反対」のプラカードを持つ厳しい表情のツインテールの少女を描いた「No Nukes」(98年)など話題の作品が数多く展示されている。中でも「No Nukes」は、東日本大震災後、12年7月に、福井県にある二つの原子力発電所の再稼働を決定した政府に対して10万人もの人々が集まった際、多くの人が、奈良が無償でダウンロードを許可した「No Nukes Girl」と名付けられたこの絵をプラカードとして持っていたことでも話題となった。

奈良のスタジオを再現した木製の建築物。手描きの外観には「Place Like Home」と書かれた手描きの看板が掲げられている

 また、同展を記念し販売されている限定版カタログ(ハードカバー/224ページ)には、14冊の小冊子を収めたケースとLPレコードが付いており、A面には奈良お気に入りのアメリカのインディーズロックバンド、ヨ・ラ・テンゴのオリジナルとカバー曲、B面には60〜70年代の曲が収録されている。
 奈良美智展は7月5日まで開催され、展示場は「BCAM(The Broad Contemporary Art Museum)レベル2」。ロサンゼルス郡在住者は、平日午後3時以降の入館が無料。LACMAでの開催後、上海のユズ・ミュージアムなど他の美術館を国際的に巡回する予定となっている。
 ウェブサイト—
 lacma.org

 奈良美智 1959年生まれ。青森県弘前市で育つ。87年に愛知県立芸術大学で修士号を取得後、93年にドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーに留学。90年代半ばから、ヨーロッパ、アメリカ、日本、アジア全域で幅広く作品を発表している。2000年に帰国。ペインティングを中心に、ドローイングやセラミック、ブロンズなどを使った彫刻、廃材を利用したインスタレーション、また日常の風景や旅先での出会いを記録した写真も制作している。
【砂岡泉】

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