Browsing: 川口加代子

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 4月も終りだというのに、雨交じりの雪が一日中降り続いた土曜日。  「まるでシカゴみたいな天気だね」誰かの冗談を思い出しながら葉にも蕾にも雪を被って、それでも兵士のように直立している庭のチューリップを時々眺めて一日過ごしたが、一夜明けると雪はたちまち春の日差しに溶け、空は抜けるほど青く広がっていた。

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 朝早くホールセールから届いて、冷蔵庫の中で水を吸い上げて咲き誇っていたロングステムの紅いバラも、閉店時間が近づくとほとんど売れて、ガラス張りの花屋の冷蔵庫の中には空のバケツが目立ち始める。  日本から来てやっと半年、慣れない英語に四苦八苦しながらダウンタウンの花屋でフラワーデザインの仕事をしていた頃の話である。

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 昨年のことだが、職場のホリデー・イベントでインターネットを通してボランティアを探した時、偶然その催しの日に自由な時間があるという理由で応募してくれた人がいた。  スウェーデン在住で、たまたまシカゴに短期滞在中の日本人女性のMさん。職業は料理や栄養学のバックグラウンドを持つプライベート・シェフ。

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 年が明けて最初の週末に告別式があり参列した。  故人が99歳6カ月と高齢だったこともあり参列者も一通りお悔やみは述べても湿っぽさは無く、もっぱら楽しかった故人との思い出話に花が咲き、参列者同士が旧交を温め合う風景があちらこちらでみられた。  そういう私もご無沙汰をしていた友人、知人に久しぶりに会えて、告別の会場で新年のあいさつを交わすことになった。

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 黒柳徹子さんの著書「トットの欠落帖」を読みながら、今から20余年前に黒柳さんと数時間ご一緒したことを思い出した。パートタイムで商工会議所の仕事を手伝っていた時のことだ。  「今年の新年会のゲストは黒柳徹子さんで、講演をお願いしているんですが、当日宿泊先から会場のホテルまで同行して控え室でお世話してもらえますか。

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 トランプ大統領の信奉者が自家製のパイプ爆弾を、オバマ前大統領など民主党の主要人物やメディアに送りつけた。  幸いなことに犠牲者も出ず、犯人も数日で逮捕されたが、ピッツバーグではユダヤ教の礼拝の行われていたシナゴーグで銃が乱射され11人もの犠牲者がでた。世の中危険極まりない。

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 「久しぶりに日本へ帰ったら実家の周辺がすっかり変わってしまって郷愁に浸ることも出来なくて…」とはFさんの話。  変わる、といえばこちらは40数年住んでいる自宅周辺が、ここ2年ほどの間に、古い建物は取り壊されて更地になったと思うまもなく新しいビルが建ちコマーシャル・ベースで開発が進んでいる。

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 車を運転しない私の移動手段は、普段は時間と事情がゆるせば、もっぱらシニア・ディスカウントで一回1ドル15セントの市営バスや電車を利用するが、急ぐ場合や天候によってはウーバーのお世話になる。  タクシーでもウーバーでも、どんな運転手に当るかで、目的地までの15分か20分の間に、ちょっとした会話から、私の知らない世界が開けることもあり、A点からB点へのただの移動に終わることもある。

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 「Aさんもこの頃物忘れがひどいね。ミーティングの日を忘れて一日遅れてやって来て、誰が予定を変えたのかって怒り出して、大変でしたよ」  こんな話は本人がその場に居なくても何となく小声で話される。アルツハイマーではないらしいが、ずばり言えば老人ボケが進んできたということなのだ。

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 選挙の度に選択に一番時間がかかり、不真面目な話だが、最後には誰が誰だか分からなくなって、適当に選ぶのが判事の選択である。  日本から来て選挙権を獲得した帰化市民の友人は、「何となく真面目そうな名前だから…公平そうに見えるから」と理由にならない理由で判事を選んでいた。

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 先ほどから、何度も電話のメッセージを聴き直している。  「折り返し電話をください」というのだが、メッセージに残された電話番号の最後の二桁の番号が聞き取れない。それらしい番号で何度かかけてみたがいずれも間違い電話。  知っている人ならリストから調べてかけることも出来るが、未知の人ではそれもできない。

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 麻薬性の強い鎮痛剤の中毒になり一年程服用を続けていた女性が死亡して、家族が処方箋を出し続けた医師を相手に訴訟を起こした。  アルコール依存症や麻薬中毒から抜けられない人は意志が弱いのだろう、などと昔は簡単に考えていた。  芸能人やスポーツ選手、あの人がと驚く有名人が麻薬やアルコールの中毒に侵されてあたら才能も命までも失うケースは多々あるが、身近に中毒症で苦しむ人がいないと、どこか対岸の火事を見るような気持ちで深く考えることはない。

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