Browsing: 萩野千鶴子

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 3年前にスマートホームの売買に関わった時は、驚きの連続だった。居間と主寝室の壁に設置された小さなパネルで豪邸のドアの鍵、室内外の電気、噴水、全てがコントロールできる。それとスマートフォンが連結し、実際には手元のスマホですべてを操作する。  2階の寝室で寝た時に、ふと、玄関の鍵をかけたかと不安になる時がある。

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 仕事柄、高齢になった日本人一世在米者に会うことが多い。雑談の中で必ず出てくる話題がある。「全く違った世の中になってきた、もう別世界だね」という話の内容だ。  日常の電気、水道、ガスの支払いなど、単純なことだが、方法を変えようと思えば電話で人間と話すことは、ほぼ無理だ。

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 毎年、クリスマス時は、久しぶりに集まる家族や、ご無沙汰していた友人、知人へのあいさつで、一年を振り返る。滞米約40年、過ぎた日々に思いを重ねることも多い。渡米して結婚し、就職し、子供が生まれ、成長して巣立った。そしてある日、もう若くない自分の姿を鏡の中に見る。

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 読書の秋、と書いて、はたと手が止まった。そして、たまらなく、寂しくなった。本屋が街から消えてしまったのだから。以前は車で行ける範囲に日本書店が2軒あり、目当ての本がなければ、そこで、注文できた。本が届くのを待つ時間も楽しかった。  休日の暇つぶしはたいてい本屋で、それがまた、こよなく充実したリフレッシュの時間でもあった。

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 吉野彰氏に2019年のノーベル科学賞が授与される。テレビに映る吉野氏は一見、どこにでも居そうな好々爺だが、一旦口を開くと、別人である。研究に関するどんな質問にも懇切丁寧に、しかも、わかりやすく回答され、科学には無縁の私にも、なんとか理解できた。門外漢に難しい内容を易しく説明するのは、力がいる。

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 私事で恐縮だが、9月1日、70歳の誕生日を迎えた。69歳から一つ年をとっただけなのに、何かが劇的に変わり、それ以後は嬉しさで一杯の日々を過ごしている。これまでも年を重ねることは、寂しさより満足感のほうが大きかったが、心に溢れる充足感は今回が初めてである。

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 秋桜と書くコスモスは、日本では秋の季語として使われるが、加州の我が家の前庭には、真夏日が続く今を盛と咲いている。前庭は早朝に朝日を受け、植物が良く育つ。水をやるだけだが、勢いよく何重にも群生している。赤、白、濃淡のピンクと、色とりどりの花々がそよぐ姿は格別に美しい。

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 今、私は夢の中である。というのは、現実のすべての風景が、すがすがしく輝いて見えるからである。事務机の向こうに広がる裏庭は、白、紫、黄色、オレンジ、ピンク、赤の花々の色が飛び交い満ちて、光輝いている。木々の葉の先は銀色や黄緑の光がキラキラ無数に踊っている。なんて美しい庭だ。

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 読書やセミナーから得た共通の情報では、高齢者の課題は、病気と孤独だそうだ。私自身も、目と歯がダメになり、なんとなく鬱(うつ)になる孤独感を体験し始めた。明るく元気で、一生前進すると計画していたのに、驚きの展開に面食らっている。  長年の使用で、くたびれ始めた体は、各々の個体特有の弱い箇所に、病気が発症する。

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 ラグナビーチに近いアリソ・ビエホの丘の天辺に、バシリカ建築の立派な建物が連なっている。初めて見た人は、その大規模な建築物の色合いといい、建築スタイルといい非の打ち所のない立派さに驚く。威厳がある。一体何だろうと思うはずだ。  周囲は丘また丘が連なり、ビーチ特有の澄んだ青空と自然の緑が目に染みる。

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 先日、友人たちと集まり、1年に1度の旧交を温める機会があった。5名全員、各々の分野で専門職を持ち、それなりに業績を残してきたプロフェッショナルである。くったくのないお喋りだが、話の内容は豊かで実りがある。仕事、ボランティア、社会や経済の動き、こういう場にはご法度とされる政治や宗教の話題も出る。

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 行きつけの郵便局や銀行の窓口に異変が起きている。私は米国西海岸で一番大きいリタイアメントコミュニティー、ラグナウッズ市の傍に住んでいる。近所の郵便局はかつてはそこの老人たちで賑やかだった。局員は彼らの名前を覚えていて、明るく迎え、小会話を交わしながら、仕事をテキパキと片付けた。

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